前回は、「妊娠中のタバコ(喫煙)がいかにNGなものであるか」について、その理由をご紹介しました。
喫煙者本人やその周囲から起こってしまう受動喫煙のなかでも特に気を付けたいのがサードハンドスモーク(三次喫煙)ということもお伝えしましたが、タバコの煙の有害性をきちんと理解できていないと、思わぬところで受動喫煙の被害にさらされてしまうかもしれません。
今回は「サードハンドスモークの害」をテーマに、妊娠中には特に気を付けたいポイントを具体的にまとめていきます。
どれだけ気を付けていても襲ってくるタバコの煙
「家族も自分も吸わないから大丈夫」
「禁煙席しか座らないようにしているから大丈夫」
「いつもマスクをつけているから対策はばっちりだと思う」
自分では十分に対策ができていると思い込んでしまう方も非常に多いのですが、喫煙者や喫煙者の周りに近づかなかったとしても、見えないタバコの煙※はあちらこちらに漂い、あらゆる場所に染み付いています。
※ここでは分かりやすくタバコの煙と書いていますが、正確にはタバコの煙に含まれる発がん性物質等の有害物質のことを指しています
タバコの煙がだいぶ離れたところまで届いてしまうことは、以前の記事でもご紹介しましたね。
しかし、煙が直接届いてしまう距離にいくら気を付けても、人を介して運ばれる煙(タバコの有害物質)を完全に遮断することは難しいと言われているのです。
専門家の指摘でも、受動喫煙をゼロにすることはできないと言われています。
喫煙者が存在する限り、タバコの煙はどこにでもあり、どこまでも追いかけてくるものなのです。
あなたと赤ちゃんを守るために知っておきたいこと:あなたが吸わなくても・・・
妊娠中は些細な身体の変化も気になるものですよね。少しでも気分が悪くなったりお腹が張ったりすると、「お腹の赤ちゃんは大丈夫かな…」と心配になってしまうお母さんも多いことでしょう。
喫煙による害に関していえば、受動喫煙の方が身体に受ける害が多いことはよく知られていますね。タバコの煙に含まれる様々な有害物質は、流産や早産、死産、早期新生児死亡のリスクを高めるだけでなく、低体重の赤ちゃんが生まれてしまうリスクも高めてしまいます。
これを読んでいるあなたはもちろん非喫煙者かもしれません。そして、あなたのご家族も非喫煙者かもしれません。
しかし、もしも親しい友人や会社の同僚が喫煙者だとしたら…あるいはタバコの煙が染み付いた場所に出入りすることが多いとしたら…残念ながらすでに、サードハンドスモークは起こっていると言えます。
普段の生活のなかで、どのタイミングでどの程度の害にさらされやすいのかを理解しておくことは、自分と赤ちゃんの身体を守るためにも役立つはずです。
サードハンドスモークを避けるために
生活環境における受動喫煙が人体にどのような影響を及ぼすのか。その危険性を測定する指標として、「微小粉塵濃度」というものがあるそうです。これは、大気汚染の指標でよく紹介される、あのPM2.5です。
PM2.5の粒子は非常に小さく、その大きさは髪の毛の太さ30分の1程度だと言われています。
細かい粒子であるために、肺の奥深くまで物質が入り込みやすく、呼吸器系や循環器系へ及ぼす影響が懸念されているそうです。
残念ながら、このような微小な粒子は通常のマスクでは遮断することができません。防塵マスクなど特殊なものであればシャットアウトできるようですが、着用していると呼吸が苦しくなりやすいため、普段使いには到底向きませんね。
WHO(世界保健機関)では、人体に影響のないPM2.5の濃度に関する評価基準を公開しており、24時間平均では25㎍/m3以下、年間平均では10㎍/m3以下とされています。WHO(世界保健機関)より
この数字ではちょっと分かりにくいので、日本禁煙学会で公開されている資料をもとに、具体例を挙げて見ていきたいと思います。日本禁煙学会のファクトシートでは、飲食店およびサービス業界におけるPM2.5の濃度を計測した複数の論文の研究結果をまとめて一覧にしています。

これを見ていくと、完全分煙や不完全分煙とある場所(居酒屋やファーストフード店など)であっても、かなり危険なレベル(緊急事態)を示していることが分かりました。
確かに、禁煙席にいてもタバコの臭いが漂ってくることがありますよね。「分煙」では煙を遮断しきれないということが、データからも明らかになっているようです。
パチンコ店や喫茶店など、普段何気なく自分や家族が出入りしがちな場所にも、多くの危険が潜んでいます。
先ほどのWHOの基準を下回るレベルで安全性が認められていたのは、「全面禁煙のコーヒー店」のみとのこと。
喫煙席が設けられていないお店の方が、より安心できる場所であるということが分かりました。
喫煙者や喫煙席、喫煙所周辺に近づかないようにするだけでなく、友人と集まるときや家族と外食するときなども、確実に「全面禁煙」になっている場所を選ぶようにしたいですね。
次回は、「タバコの種類やそこに含まれる害」ついてまとめていきます。
<参考>
微小粒子物質(PM2.5)に関するよくある質問 環境省(PDF)
調査報告 身近な環境問題としての受動喫煙被害の実態 村田陽平(PDF)